薄っすら感じてはいた物価上昇。そろそろ現実を数値で考えておこうと思う

投資全般

こんにちは。チンアナゴです。

スーパーやコンビニなどの小売店で買い物をしている時、ふいに値札を見て商品の値上がりにビックリした経験はありませんか?

特に普段よく買うような商品だと、だいたいの値段が頭に入っているぶん、余計に値上がりを敏感に感じます。

例えばコンビニのポテトチップス(NB品)を例とすると、つい数年前は1袋140円もあれば買えましたが最近では同じ商品でも平気で170円を超えてきたりもします。

他にも、お弁当類やデザートをはじめとして様々なもので、ひと昔前と比べると値段が上がっていたり内容量が減っていたりしているものが多々ありますね。

もちろん、同じ商品であっても購入店舗・購入方法によって値段に結構な違いが出てくるのでコンビニの例だけでは言い表せないですが、やはり全体傾向としては物の価格である物価が高くなっている印象を持っている人は多いんじゃないでしょうか。

そんな物価、生活実感から考えれば当然上がらない方が嬉しいと思うのですが、経済としてはどうも一概にはそう言えないようです。

物価安定の目標として、日銀が消費者物価指数の前年比上昇率で2%の上昇目標」を掲げている事をはじめとして、一般的には経済を成長させていくには緩やかなインフレ状態が望ましいとされています。

目指すは緩やかなインフレ状態という事なので、単に物価だけの上昇ではなく企業業績や給与もセットで上昇していく事を目標としている事になります。こういった物価上昇目標をかなり前から掲げている中、実際にはどうなっているんでしょうか。

私がこんな事を気にしだしたのはライフプランシミュレーション作成にあたって「今後の物価上昇の織り込み程度」を考えた事がキッカケでした。

過去を思い返すと物価上昇は感じるものの、どうにもそれに伴う給与上昇というのはあまり記憶にありませんでした。。(ほそぼそですが)まぁ給与は毎年上がってはいますが、それは会社規定に則った昇給であって物価上昇への対応分はそこに盛り込まれてはいません。

そういった過去の記憶から、物価上昇と賃金上昇のバランスが実際どうなっているのかがとても気になる様になってしまいました。

という事で今回の記事では、日本の消費者物価指数推移と平均賃金推移について数字で捉えてみて、今後にどう織り込んでいくかを考えていきたいと思います。

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消費者物価指数の推移を知ってみる

まずは日本の物価推移を知るという事で、消費者物価指数を調べてみます。

この消費者物価指数、ほとんどの人が一度は聞いたことがあるポピュラーなワードと思いますが、実際にその定義が何なのかと言われると、案外説明できる人は少ないんじゃないでしょうか。

消費者物価指数とは…

消費者物価指数とは、消費者が購入する商品の小売価格の動きを表したもので、総務省統計局が毎月発表しているものです。

これは日常生活で消費者が購入する商品の価格の動きを総合して見ようとするものなので、私たちが普段購入するような食料品・衣料品・電気製品・化粧品などの財の価格の動きだけでなく、家賃・通信料・授業料・理髪料などの様なサービスの価格の動きも含まれます。

基本的な考え方は、
「暮らしに必要な商品を全て一つの買物かごに入れて、買物かご全体の費用が時点によってどう変わるかを考える」
といったものになります。この買物かごに入れる商品は、「家計調査」の結果を基に選ばれます。

そして、比較の基準となる年に買物かごの中身を固定して、その時点の物価を100として月々の費用の変化を測定しています。

現在公開されている消費者物価指数は、基準となる年を2020年とした「2020年基準指数」となります。

消費者物価指数(総合)は50年間で3.24倍、45年で1.72倍、20年間で1.03倍

図は、赤太線(総合)が消費者物価指数全体を、細線・破線は項目別詳細を表しています。

総合指標だけで見ると、50年間の上昇率は約3.24倍と大きな上昇ですが、ここ20年では約1.03倍とほぼ横ばいです。

冒頭でも触れた日銀の掲げる前年比上昇率2%の物価上昇目標は2013年からの継続目標ですが、8年が経過しても実現が程遠い事がよくわかります。

この20年間だけで見ると総合物価指数はほぼ上昇していないので今後の物価上昇はあまり気にする必要が無い様にも感じますが、長いスパンで見ればかなりの物価上昇率となっている事も事実なので、長期目線では今後もそれなりの物価上昇を見込んでおく方が良いかと考えます。

詳細指数をウェイト別に見てみる

ウェイトとは、基準時の消費支出額から世帯で購入した個々の品目ごとに幾ら支出したかを調査し、消費支出額全体に対してどのくらいの割合を占めているかを計算し、これを個々の品目ごとに算出したものを言います。

下記の円グラフがそれで、今回は2020年基準の消費者物価指数をベースに作成しています。

なお、あくまで消費者物価指数が元となっているので、買物かごに入れるとする家計上重要な商品が対象となるデータである事や、全年齢を対象としているのでライフステージやライフスタイルの差によっても支出大小に差がある事には注意が必要です。

また、家計調査結果による品目ごとの支出額から算出されているので、貯蓄等も加味されていません。

この様にウェイトを見てみると、暮らしに必要な商品の支出というのは、衣食住をはじめとした生活必需品類がかなりを占めている事がわかります。特に食費と住居のウェイトは大きく、この2項目で消費の半分程というのは、驚きますね。

なお、個人の目線では平均的な家計支出の図にしか見えませんが、消費という目線で見てみるとどの産業にどれだけのお金が流れているのかという見方にもなるので、面白いですね。

物価指数の推移と2020基準のウェイトを併せて考えてみる

先ほどの直近20年間の物価推移、総合指数ではほぼ横ばいでしたが、項目別で見てみると上昇・下落の動きはそれぞれかなり異なりました。

直近20年間の物価推移を3%の変動幅で分類し、2020基準のウェイトと併せて考えてみます。

 <3%以上の物価上昇品目>
  ・内訳   : 食料、光熱・水道、被服、保険医療、諸雑費
  ・ウェイト計: 48%

 <横ばい(-3%~+3%)の品目>
  ・内訳   : 住居、交通・通信
  ・ウェイト計: 36%

 <3%以上の物価下落品目>
  ・内訳   : 教養娯楽、家具・家事用品、教育
  ・ウェイト計: 16%

物価上昇に属する品目には「食料」「光熱・水道」「保険・医療」を始めとした生活必需品類が並び、物価下落の品目には「家具・家事用品」「教養娯楽」「教育」等どちらかというと必需品ではないものが並んでいる様に見えます。

要するに、総合の消費者物価指数は横ばいとは言いつつも、生活必需品類の物価が上昇して非生活必需品類が下落する事で総合的には消費者物価指数(総合)が横ばいという構図となっています。

非生活必需品類のモノやサービスというのは、物価が下がってきているとは言っても誰もがそこに支出するとは言えません。どちらかと言うと、生活の余裕資金が充てられるイメージですね。

それに対し、生活必需品類は誰にも継続的に必要となる物なので、ここに物価上昇が多くあるならば総合の消費者物価指数が横ばいと言いつつも、実は物価上昇の影響をその数値以上に受けている人は案外多くいるのではないかと感じています。

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平均賃金の推移

次に日本の平均賃金の推移を調べていきます。

平均賃金については様々なデータソースがありますが、本記事では厚生労働省の公表している「令和2年賃金構造基本統計調査」をもとに話を進めます。

平均賃金は 45年で2.3倍、20年で1.02倍

図は、赤太線が一般労働者の男女計を表しており、細線は男女別推移になります。

(データソースが1975年以降だった為、消費者物価指数と比較年数を揃えきれていません)

一般労働者とは

「一般労働者」とは、「短時間労働者」以外の者をいう。
「短時間労働者」とは、同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者をいう。

 出典:厚労省HP

平均賃金の推移は、45年比較では消費者物価指数よりも高い伸び率にはなっていますが、直近20年では消費者物価指数とほぼ同じように横ばいとなっています。

毎年春になるとトップ企業の春闘情報が報道され、その賃金交渉の内側にはベースアップ要求もしっかり含んで妥結出来ている事も多いですが、やはり日本の平均賃金という全体感を見ると、こういった横ばい推移になるんですね。

(こういった話に詳しくはないのでよくはわかりませんが、定期昇給による賃金増は退職者と新入社員で概ね相殺され、平均賃金上昇にはベースアップが効いてくるものと考えています)

また、男性の平均賃金は2001年をピークに未だ追い越せていない状態ですが、女性の平均賃金は現在までピークを更新し続けています。

おそらく働き方の変化が一番効いているのだと考えますが、1人ひとりの働き方にしても、家庭のあり方・結婚のあり方にしても、世の中の当たり前はほんの数十年前と今とでかなり違うものになってきています。

これから先も、きっと目まぐるしい変化があるのでしょうが、その時の世の中の当たり前はどういったカタチに変わっているんでしょうね。

物価上昇に伴って本当に給与は上昇するのか?

平均賃金はここ20年で横ばいという話がありました。

冒頭にインフレとは単に物価だけの上昇ではなく、企業業績や給与もセットで上昇していく事と書きましたが、果たして今の日本で物価連動するカタチでの賃金上昇というのはどれくらいあるのでしょうか。

労働者の大多数を占めるサラリーマンの賃金上昇の仕方は、基本的には各企業の人事制度に則ったカタチでの昇格や定期昇給かと思います。

これらは物価上昇によって都度変動するような事はないので、物価上昇に追随しての賃金上昇というのは別軸のベースアップによる基本給増加等が相当するかと考えます。

企業にとって将来に渡ってもコストアップとして響いてくるベースアップを物価上昇に追随して自主的に行っていく企業がどれだけあるかと考えると、一部の優良企業や労働組合が活発な企業以外ではあまり無いのではと感じてしまいます。

少なくとも上述の日本の平均賃金を引き上げるにはかなりの押し上げ圧力が必要となるので、そこまで多くの企業が賃金上昇を提示する時が来るのかはちょっと疑問です。

とは言え、実際にはバブル期等で物価に併せて平均賃金が急上昇している時代も確かにあったわけで。私には、当時の社会が全体的にどの様な賃金上昇をしていったかのイメージができないだけで、来たるべき時が来たら令和の今も自然と社会全体の賃金上昇の波が来るのだと信じてはみたいところですね。

ですがまぁ、イメージ出来ない以上はあまりそこへの期待は持たない様にしています。

物価上昇と平均賃金の今後への織り込み

ここまで、過去の消費者物価指数の上昇推移一般労働者の平均賃金の推移を比較してみました。

データソースや切り取る期間などによって見え方もかなり変わりますが、私は「ここ20年で生活必需品類の物価が集中的に上昇している事で実質的には家計支出は厳しくなっているが、平均賃金は横ばいの為、生活水準としては過去より落ち込んでいる」という捉え方をしました。

イメージとしては、生活必需品類の支出が増え、逆に娯楽や教育といった非生活必需品類に掛けられる支出額が減った事で、これら項目の商品は安価な物が優位となって物価下落し、それに支えられて総合物価指数が横ばいになった、といった考えになります。

これらを踏まえて、自分のライフプランシミュレーションには、物価上昇は年率1%で織り込み、物価上昇に追随するカタチでの給与上昇は発生しない、という想定で試算をしています。

ちなみに年率1%の継続というと、20年後には22%増・50年後には64%増、といった物価上昇を見込むという事になります。

過去の物価上昇の歴史をからすればもう少し上目に見ても良さそうにも感じますが、経済成長が一旦停滞している今の日本ではこれくらいを見込んでおけば十分かと思って設定しています。仮に予想以上に物価上昇があったとしても、物価上昇に追随する給与上昇を見込んではいないところで差し引きゼロかプラスになる事を見込み、この様な試算としています。

最後に

最後までお読み頂きありがとうございます。

物価上昇について真面目に考える事もそう多くはないと思いますが、こうやって調べてみると案外おもしろいものです。

今回の記事のテーマである、今後の人生設計への物価上昇の織り込みを考えるにあたって、どの程度の数値を見込んでおくのが正解かなんて事の答えは誰も持っていないでしょうが、ある程度悪い結果にも耐えられる様にシミュレーションは厳しめにしておくと安心かと思います。

この記事がみなさんの投資の参考になれば幸いです。
楽しみながら自分流の投資を作れるように、頑張っていきましょう!

なお、投資は自己責任でお願いいたします。

《出典》
 「消費者物価指数」(総務省統計局)を加工して作成

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